【ダランベールの誤りとは?】数学の常識を覆す驚きの事実

今回は、数学の歴史に残る有名なパラドックスの一つ、ダランベールの誤りについてご紹介します。

ダランベールの誤りとは、確率を計算するときに、直感に反するような結果が出てしまうことを指します。

例えば、白玉と赤玉が入った袋から無作為に一つ玉を取り出すとき、白玉である確率はどうなるでしょうか?

もし、白玉が一つだけで、赤玉がたくさんある場合は、白玉が出る確率は非常に低いですよね。

逆に、白玉がたくさんで、赤玉が一つだけの場合は、白玉が出る確率は非常に高いですよね。

では、白玉と赤玉が同じ数だったらどうでしょうか?

直感的には、白玉が出る確率は半分になると思いますよね。

しかし、ダランベールの誤りでは、この直感が間違っていることを示します。
実は、白玉と赤玉が同じ数だった場合でも、白玉が出る確率は必ずしも半分ではないのです。

これはどういうことなのでしょうか?ダランベールの誤りの原因と解決法を見ていきましょう。

この記事では以下の内容をお伝えします。

- ダランベールの誤りとは何か
- ダランベールの誤りの原因と解決法
- ダランベールの誤りの応用例

それでは早速見ていきましょう。


ダランベールの誤りとは何か


ダランベールの誤りという言葉は、フランスの数学者ジャン・ル・ロン・ダランベール(1717年~1783年)に由来します。彼は1743年に『力学論』という著書を出版しましたが、その中で次のような問題を考えました。

> ある賭博で、コインを投げて表か裏かを当てるゲームをする。最初に表が出たら賭け金が2倍になり、裏が出たら賭け金が半分になる。このゲームを何回も続けるとき、賭け金はどうなるだろうか?

ダランベールはこの問題に対して次のような答えを導きました。

> コインを投げるごとに表か裏かは同じ確率であるから、長期的に見れば表と裏が同じ回数出る。したがって、賭け金は最初と同じ額に戻る。

この答えは正しいように見えますが、実際には間違っています。

なぜならば、このゲームでは表と裏で賭け金の増減率が異なるからです。表が出たら賭け金が2倍になりますが、裏が出たら賭け金が半分になります。

つまり、表が出た回数と裏が出た回数が同じでも、賭け金は最初よりも減ってしまうのです。

例えば、最初に100円を賭けたとします。コインを投げて表が出たら200円になりますが、裏が出たら100円の半分の50円になります。

このように続けて、表と裏がそれぞれ10回ずつ出たとしましょう。このとき、賭け金はどうなるでしょうか?

答えは、約0.1円です。これは最初の100円と比べて非常に小さい額です。このように、ダランベールの答えは実際のゲームとは大きくかけ離れています。

これがダランベールの誤りと呼ばれるパラドックスです。


ダランベールの誤りの原因と解決法


ダランベールの誤りの原因は、確率を計算するときに重要なことを見落としていることです。それは、

確率を求めるときには、起こりうるすべての場合が同様に確からしいことが大前提である

ということです。

確率を求めるときには、次のような式を使います。

> ある事象が起こる確率 = ある事象が起こる場合の数 / 起こりうるすべての場合の数

この式を使うときには、起こりうるすべての場合が同じ確率で起こると仮定しています。しかし、実際にはそうでない場合もあります。

例えば、白玉と赤玉が入った袋から無作為に一つ玉を取り出す場合を考えましょう。

白玉が一つだけで赤玉がたくさんある場合と、白玉がたくさんで赤玉が一つだけの場合では、白玉が出る確率は異なりますよね。このように、起こりうるすべての場合が同様に確からしいとは限らないのです。

ダランベールの誤りでは、コインを投げるごとに表か裏かは同じ確率であるという前提を使っています。

しかし、これはコイン自体の性質に関する前提であって、ゲーム全体の性質に関する前提ではありません。

ゲーム全体では、表か裏かだけでなく、賭け金も重要な要素です。賭け金が変化することで、ゲーム全体の状態も変化します。したがって、ゲーム全体では起こりうるすべての場合が同様に確からしいとは言えないのです。

では、どうやって正しい答えを求めればいいでしょうか?

そのためには、期待値という概念を使います。

期待値とは、ある試行を繰り返したときに平均的に得られる値のことです。期待値を求める方法は次のような式で表されます。

> 期待値 = 各事象が起こった時に得られる値 × 各事象が起こる確率 の総和

この式を使って、ダランベールの問題における賭け金の期待値を求めてみましょう。最初に100円を賭けた場合を考えます。コインをを投げると、表が出る確率は 1/2です。したがって、期待値の計算式に当てはめると、

> 期待値 = 表が出た時に得られる値 × 表が出る確率 + 裏が出た時に得られる値 × 裏が出る確率

となります。

表が出た時に得られる値は賭け金の 2倍*で、裏が出た時に得られる値は賭け金の 半分です。賭け金を xとすると、

> 期待値 = 2x × 1/2 + x/2 × 1/2
> = x + x/4
> = 5x/4

となります。これは、コインを投げるごとに賭け金が 5/4倍になることを意味します。

したがって、コインを n回投げたときの賭け金の期待値は、

> 期待値 = x × (5/4)^n

となります。これは、コインを投げる回数が増えるほど、賭け金の期待値が指数関数的に増加することを示しています。

例えば、最初に 100円を賭けた場合を考えてみましょう。コインを 10回*投げたときの賭け金の期待値は、

> 期待値 = 100 × (5/4)^10
> ≒ 931.32

となります。つまり、平均的には 931.32円もらえることになります。これは、最初の賭け金の約 9.3倍です。

しかし、これはあくまで期待値であり、実際にはこのような結果になるとは限りません。

実際には、表や裏が偏って出る可能性もありますし、全く出ない可能性もあります。期待値はあくまで平均的な傾向を表すものであり、個々の試行の結果を保証するものではありません。



ダランベールの誤りの応用例


ダランベールの誤りは、コイン投げだけでなく、他の様々な確率的な現象にも応用することができます。例えば、次のような問題を考えてみましょう。

> ルーレットで赤か黒かを当てるゲームをする。最初に100円を賭けて、当たれば200円もらえるが、外れれば100円失う。このゲームを何回も続けるとき、賭け金はどうなるだろうか?

この問題では、赤か黒かは同じ確率であるから、長期的に見れば赤と黒が同じ回数出ると考えるかもしれません。しかし、これはダランベールの誤りです。

実際には、赤か黒かだけでなく、賭け金も重要な要素です。賭け金が変化することで、ゲーム全体の状態も変化します。

この問題では、期待値を計算することで正しい答えを求めることができます。赤か黒かは同じ確率であるから、

> 期待値 = 当たった時に得られる値 × 当たる確率 + 外れた時に失う値 × 外れる確率

となります。当たった時に得られる値は賭け金の 2倍で、外れた時に失う値は賭け金そのものです。賭け金を xとすると、

> 期待値 = 2x × 1/2 + (-x) × 1/2
> = x/2

となります。これは、ルーレットを回すごとに賭け金が 半分になることを意味します。したがって、ルーレットを n回回したときの賭け金の期待値は、

> 期待値 = x × (1/2)^n

となります。これは、ルーレットを回す回数が増えるほど、賭け金の期待値が指数関数的に減少することを示しています。

例えば、最初に 100円を賭けた場合を考えてみましょう。ルーレットを 10回、回したときの賭け金の期待値は、

> 期待値 = 100 × (1/2)^10
> ≒ 0.098

となります。つまり、平均的には 0.098円もらえることになります。これは、最初の賭け金の約 0.001倍 です。

このように、ダランベールの誤りは、直感に反するような確率的な現象を理解するための有用なツールです。

しかし、同時に、確率的な現象に対する直感や常識に疑いを持つことも大切です。確率的な現象は、しばしば私たちを驚かせることがあります。


まとめ


この記事では、ダランベールの誤りというパラドックスについて紹介しました。ダランベールの誤りとは、確率を計算するときに、起こりうるすべての場合が同様に確からしいことを前提としてしまうことで生じる間違いです。

ダランベールの誤りを避けるためには、期待値という概念を使って、平均的な傾向や結果を求めることができます。

ダランベールの誤りは、コイン投げやルーレットなどのゲームだけでなく、他の様々な確率的な現象にも応用することができます。

確率的な現象は、しばしば私たちの直感や常識に反するような結果をもたらします。そのような現象を理解するためには、確率や期待値の計算方法や公式を覚えておくことが大切です。

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