【水族館の経営と運営】知られざる裏側と課題に迫る!
今回は、水族館の経営と運営について、深く掘り下げてみたいと思います。
水族館は、私たちに夢と癒しを与えてくれる素晴らしい施設ですが、その裏側にはどんな仕組みや課題があるのでしょうか?
この記事では、以下の3つの観点から水族館の経営と運営を考察していきます。
・水族館の種類と特徴
・水族館の収益源とコスト
・水族館の課題と展望
それでは、早速見ていきましょう!
【水族館の種類と特徴】公営と民営の違いは?
まずは、水族館の種類と特徴について見ていきましょう。
日本には約100館もの水族館がありますが、その経営主体は大きく分けて公営と民営に分かれます。
公営とは、都道府県や市町村などの自治体が設置や出資を行っている水族館で、民営とは、民間企業や団体が設置や出資を行っている水族館です。
それぞれにどんな特徴やメリット・デメリットがあるのでしょうか?
公営水族館の特徴は、以下のようなものが挙げられます。
・教育的・社会的な目的が強く、無料来館者や学校行事などが多い
・資本力が大きく、比較的大型で規模の大きな施設が多い
・老朽化や改修に伴う費用負担が重く、地方財政に影響する
・指定管理者制度やPFIなどを導入して、民間企業に運営を委託するケースもある
一方、民営水族館の特徴は、以下のようなものが挙げられます。
・利益追求や集客力が重視される
・小規模でも工夫ある展示やイベントで人気を集める施設が多い
・自由度が高く、柔軟な経営判断が可能
・競争力や経済状況に左右されやすく、閉鎖するリスクもある
公営と民営では、それぞれに長所と短所があります。しかし、どちらも私たちに素晴らしい水中世界を見せてくれることに変わりはありません。次に、水族館の収益源とコストについて見ていきましょう。
【水族館の収益源とコスト】水中世界を支えるお金の流れ
水族館に入館するときに払うチケット代だけで、水族館は経営できるのでしょうか?
実は、水族館には様々な収益源とコストがあります。この章では、水族館のお金の流れについて、詳しく見ていきましょう。
まず、水族館の収益源には、主に以下のようなものがあります。
・入館料
・お土産やグッズの売上
・飲食やフォトサービスなどの売上
・特別イベントや会場貸し出しなどの売上
・寄付や協賛金などの収入
これらの収益源の中で、最も大きな割合を占めるのは入館料です。
日本の水族館では、収入全体の約70%が入館料によるものです。入館料は、水族館の飼育や展示を支える基本的な収入です。
しかし、入館料だけでは、水族館の経営は成り立ちません。なぜなら、水族館には多額のコストがかかるからです。
次に、水族館のコストには、主に以下のようなものがあります。
・人件費
・水道光熱費
・エサや医療費
・設備や展示物の維持修繕費
・広告宣伝費
・借入金や税金などの支払い
これらのコストの中で、最も大きな割合を占めるのは人件費です。水族館では、多くのスタッフが働いています。
飼育員や解説員はもちろんですが、レストランやショップのスタッフ、清掃や警備のスタッフ、企画や広報のスタッフなど、様々な職種があります。これらのスタッフに給与や福利厚生を支払うためには、多くのお金が必要です。
日本の水族館では、コスト全体の約40%が人件費によるものです。
また、水道光熱費も大きなコストです。水族館では、巨大な設備を使って、水中環境を整えています。海水や淡水をろ過したり循環させたりするためには、多くの電力が必要です。
また、温度や光量を調節するためにも電力が必要です。さらに、冬場は暖房費もかかります。日本の水族館では、コスト全体の約20%が水道光熱費によるものです。
その他にも、エサや医療費などで生き物たちを健康に保つためにお金がかかります。また、設備や展示物を新しくしたり修理したりするためにもお金がかかります。
さらに、広告宣伝費で集客力を高めたり、借入金や税金などで財務状況を安定させたりするためにもお金がかかります。
水族館の収益源とコストを比較すると、収益がコストを上回ることは少なく、多くの水族館は赤字経営です。特に、公営水族館では、建設費や改修費などで多額の借金があり、その返済に苦しんでいます。
そのため、公営水族館では、税金や補助金などで経営を支えています。しかし、これらの財源も限られており、地方財政に影響を与えています。
水族館の経営は、水中世界を支えるために多くのお金が必要な一方で、収益が不安定でコストが高いという難しい状況にあります。
しかし、水族館は、私たちに夢と癒しを与えるだけでなく、自然や生き物の大切さを教えてくれる教育的・社会的な役割も果たしています。
次に、水族館の課題と展望について見ていきましょう。
【水族館の課題と展望】水中世界を未来につなぐために
水族館の経営は、収益とコストのバランスが難しいだけでなく、社会的・環境的な課題にも直面しています。この章では、水族館が抱える主な課題と、それに対する展望について、見ていきましょう。
まず、水族館が抱える主な課題には、以下のようなものがあります。
・人口減少やコロナ禍による来館者数の減少
・老朽化や競合施設の増加による集客力の低下
・生き物の確保や繁殖の困難さ
・生き物の福祉や保全への関心の高まり
・地域社会との連携や貢献の必要性
これらの課題に対して、水族館はどのように対応しているのでしょうか?
以下に、いくつかの事例を紹介します。
・人口減少やコロナ禍による来館者数の減少に対しては、オンラインでのサービスやコンテンツの提供を強化しています。
例えば、水族館からライブ配信や動画を発信したり、オンラインで解説や体験を楽しめるプログラムを開催したりしています。
これらの取り組みは、来館できない人や遠方に住む人にも水族館の魅力を伝えるだけでなく、水族館への興味や関心を高めることにもつながります。
・老朽化や競合施設の増加による集客力の低下に対しては、改修やリニューアルを行っています。例えば、「2020年問題」とも呼ばれる30年周期で必要とされる大規模な改修を行う水族館が多くあります。
これらの改修では、新しい展示や設備を導入するだけでなく、水族館のコンセプトやテーマを見直したり、地域や社会との関係性を強化したりすることも重視されています。
・生き物の確保や繁殖の困難さに対しては、国内外の水族館と連携しています。例えば、「日本協会 of 動物園 & 水族館(JAZA)」では、「動物園・水族館動物管理委員会(JMC)」という組織を設置し、各種目ごとに「種別委員会」を設けています。
これらの委員会では、水族館間で生き物の移動や交換を調整したり、繁殖計画や管理方法を策定したりしています。これらの取り組みは、生き物の多様性や健康を保つだけでなく、希少種や絶滅危惧種の保全にも貢献しています。
・生き物の福祉や保全への関心の高まりに対しては、教育や啓発を行っています。例えば、水族館では、生き物の飼育や展示において、生き物の自然な行動やニーズを尊重したり、ストレスや苦痛を軽減したりすることに努めています。
また、水族館では、来館者に対して、生き物の特徴や生態を解説したり、生き物との触れ合いや体験を提供したりすることで、生き物への理解や感情移入を促進しています。
さらに、水族館では、来館者に対して、海洋環境の問題や保全の取り組みを紹介したり、自分たちができることを提案したりすることで、生き物や自然への責任感や行動意識を高めています。
・地域社会との連携や貢献の必要性に対しては、地域資源の活用や地域活性化の支援を行っています。
例えば、水族館では、地域の特産品や文化を展示やイベントに取り入れたり、地域の団体や企業と協力したりすることで、地域の魅力や課題を発信しています。
また、水族館では、地域の学校や福祉施設などに出張したり、地域のボランティアや市民団体などに参加したりすることで、地域の教育や福祉に貢献しています。
以上のように、水族館は様々な課題に対応しながら、水中世界を未来につなぐために努力しています。
しかし、これらの取り組みはまだまだ十分ではありません。
水族館は、自らの役割や価値を見直し、社会的・環境的なニーズに応えることが求められています。
次に、水族館が目指すべき方向性について考えていきましょう。
【水族館が目指すべき方向性】水中世界を未来につなぐために
水族館は、調査研究、教育、種の保存、保全、レクリエーションなどの目的を持ち、社会的・環境的な役割を果たしています。
しかし、これらの目的や役割は、時代や社会の変化に応じて見直される必要があります。この章では、水族館が目指すべき方向性について、見ていきましょう。
まず、水族館が目指すべき方向性には、以下のようなものがあります。
・水族館のマスカルチャー化
・水族館の地域連携化
・水族館の国際協力化
これらの方向性について、一つずつ説明していきます。
・水族館のマスカルチャー化とは、水族館を単なる社会教育施設やハイカルチャー(専門的な知識が必要な文化)としてではなく、大衆文化(誰でも楽しめる文化)として捉えることです。
水族館は、子どもだけでなく大人も含めた全ての年齢層に利用されており、その利用者の多くは生き物そのものよりも水中世界そのものに興味や感動を持っています。
したがって、水族館は、生き物や自然科学の知識を教えるだけでなく、水中世界の美しさや不思議さを伝えることで、人々の感性や想像力を刺激することが重要です。
また、水族館は、人々が自ら教養を持ち文化を楽しむ機会を提供することで、生涯学習施設としても機能することができます。
・水族館の地域連携化とは、地域社会と協力して地域資源を活用したり地域活性化に貢献したりすることです。
水族館は、地域の特産品や文化を展示やイベントに取り入れたり、地域の団体や企業と協力したりすることで、地域の魅力や課題を発信することができます。
また、水族館は、地域の学校や福祉施設などに出張したり、地域のボランティアや市民団体などに参加したりすることで、地域の教育や福祉に貢献することができます。
さらに、水族館は、地域の海岸や川などの自然環境を保全したり、地域住民に環境意識を高めたりすることもできます。
・水族館の国際協力化とは、国内外の水族館と連携して生き物の移動や交換を行ったり、繁殖計画や管理方法を策定したりすることです。
水族館は、生き物の多様性や健康を保つだけでなく、希少種や絶滅危惧種の保全にも貢献することができます。
また、水族館は、海外の水族館から最新の展示技術や研究成果を学んだり、日本の水族館のノウハウを海外に伝えたりすることもできます。
さらに、水族館は、海外の海洋環境の問題や保全活動に関与したり、国際的な観光資源として認知されたりすることもできます。
以上のように、水族館は様々な方向性を目指しながら、水中世界を未来につなぐために努力しています。
しかし、これらの方向性は一朝一夕に実現できるものではありません。水族館は、自らの目的や役割を見直し、社会的・環境的なニーズに応えることが求められています。
最後に、水族館が直面する課題や可能性について考えていきましょう。
【水族館が直面する課題と可能性】水中世界を未来につなぐために
水族館が目指すべき方向性について見てきましたが、その実現にはさまざまな課題や困難があります。
この章では、水族館が直面する課題と可能性について、見ていきましょう。
まず、水族館が直面する課題には、以下のようなものがあります。
・設備の老朽化
・展示の多様化
・利用者数の減少
・動物福祉の確保
・国際的な規制の遵守
これらの課題について、一つずつ説明していきます。
・設備の老朽化とは、水族館の建物や水槽などの設備が経年劣化して、安全性や機能性が低下することです。
設備の老朽化は、水槽の漏水や破損などの事故やトラブルを引き起こす可能性があり、生き物や来館者の安全を脅かすだけでなく、水族館の信頼性やイメージを損なう恐れもあります。
また、設備の老朽化は、展示や研究に必要な最新の技術や知識を取り入れることを妨げることもあります。
したがって、水族館は、定期的に設備の点検や更新を行うことで、設備の老朽化に対応する必要があります。
・展示の多様化とは、水族館が展示する生き物やテーマを多様化して、来館者の興味やニーズに応えることです。
展示の多様化は、水族館の集客力や満足度を高めるだけでなく、生き物や海洋環境に関する知識や理解を深めることにも貢献します。
しかし、展示の多様化には、生き物の入手や管理、展示技術や解説方法などの課題も伴います。
また、展示の多様化は、水族館が持つ個性や特色を失わせることもあります。
したがって、水族館は、展示の多様化を行う際には、自らの目的や役割を明確にし、地域や社会との関係性を考える必要があります。
・利用者数の減少とは、水族館に来館する人数が減少することです。
利用者数の減少は、水族館の経営や運営に影響を及ぼすだけでなく、水族館が果たす社会的・環境的な役割にも影響を及ぼします。
利用者数の減少には、新型コロナウイルス感染症などの社会的事情や災害などの自然的事情だけでなく、来館者のニーズや価値観の変化などの要因もあります。
したがって、水族館は、利用者数の減少に対応するために、感染防止や安全対策を行うことや、来館者のニーズや価値観に合わせた展示やイベントを企画することなどが必要です。
・動物福祉の確保とは、水族館で飼育される生き物の健康や幸福を保障することです。動物福祉の確保は、水族館の倫理的な責任であるだけでなく、生き物の自然な行動や特性を展示することで、来館者の感動や学びにもつながります。
しかし、動物福祉の確保には、生き物の種類や個体に応じた適切な飼育環境や管理方法を提供することや、生き物のストレスや苦痛を減らすことなどの課題があります。
また、動物福祉の確保は、生き物の捕獲や移動などの活動にも影響を及ぼします。
水族館は、動物福祉の確保を行うために、生き物の個体識別や行動観察などのデータ収集や分析を行うことや、生き物の意思や感情を尊重することなどが必要です。
・国際的な規制の遵守とは、水族館が国際的な法律や条約などに従って活動することです。
国際的な規制の遵守は、水族館が国際社会における信頼性や評価を高めるだけでなく、絶滅危惧種や希少種などの保全にも貢献します。
しかし、国際的な規制の遵守には、生き物の入手や移動などに関する許可や届出などの手続きを行うことや、生き物の管理や展示に関する基準やガイドラインを満たすことなどの課題があります。
また、国際的な規制は時代や社会の変化に応じて変化する可能性もあります。
したがって、水族館は、国際的な規制の遵守を行うために、最新の法律や条約などの情報を入手し、適切に対応する必要があります。
以上のように、水族館が直面する課題は多岐にわたります。
しかし、これらの課題は同時に可能性でもあります。
水族館は、これらの課題に挑戦しながら、自らを改革し進化させることで、水中世界を未来につなぐために貢献できると考えられます。
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