【ディープフェイクの怖さ】AIで作られた偽物動画がもたらすリスクと対策

ディープフェイクとは、人物の動画や音声を人工的に合成する処理技術で、本物と見分けがつかないほどに精巧なものが作成できます。

しかし、そのリアルさゆえに悪用されるケースも増えており、個人や企業にとって大きな脅威となっています。

この記事では、以下の内容について解説していきます。

- ディープフェイクの定義と作成方法
- ディープフェイクによる被害と事例
- ディープフェイクを公開された場合の対処法

ディープフェイクはどのように作られるのか、どんな被害が起こりうるのか、どうやって防ぐことができるのか、ぜひ最後までお読みください。


【ディープフェイクの定義と作成方法】AIで本物そっくりに顔や声を変える技術

まずは、ディープフェイクの定義や作成方法について見ていきましょう。


ディープフェイクとは

ディープフェイクとは、「ディープラーニング」と「フェイク」を組み合わせた造語で、AI(人工知能)を用いて、人物の動画や音声を人工的に合成する処理技術を指します。

もともとは映画製作など、エンターテインメントの現場での作業効率化を目的に開発されたものです。

しかし、あまりにリアルで高精細であることから、悪用されるケースが増えたことで、昨今ではフェイク(ニセ)動画の代名詞になりつつあります。

著名人のなりすましの事例では、2021年にSNSで拡散された世界的にヒットしたハリウッド映画の主演俳優のディープフェイク動画が有名です。


実際にはモノマネタレントと俳優の顔を差し替えた動画ですが、その精巧な仕上がりが話題になりました。



ディープフェイクの作成方法

ディープフェイクは、AIの顔認証システムを利用しています。

顔認証システムとは、カメラや写真から人物の顔を検出し、その特徴点を抽出して識別するシステムです。

ディープフェイクでは、このシステムを使って、元動画から対象者の顔を切り出し、別動画から別人物の顔を切り出して貼り付けることで、顔を入れ替えることができます。


この際に、顔の向きや表情、照明などを調整して、自然に見えるようにします。


また、音声も偽装することができます。音声合成システムとは、テキストや音声から人間の声を生成するシステムです。

ディープフェイクでは、このシステムを使って、元動画から対象者の声を切り出し、別動画から別人物の声を切り出して貼り付けることで、声を入れ替えることができます。

声のトーンやアクセント、感情などを調整して、自然に見えるようにします。



【ディープフェイクによる被害と事例】個人や企業の名誉や信用を毀損するリスク

次に、ディープフェイクによってもたらされる被害と事例について見ていきましょう。


ディープフェイクによる被害


ディープフェイクは、個人的に楽しむために作成し第三者に披露することがなければ大きな問題とはなりません。


しかしながら、動画に登場する人物の許可を得ずに公開されたディープフェイクは、さまざまな被害をもたらします。

想定されるディープフェイクによる被害は以下の通りです。

- 成人向けビデオに合成される
- いじめやバイトテロなどの不適切な行為をしている動画に合成される
- 自分の主義主張とは異なる発言をしているように見える動画を作成される
- 違法行為をしている動画に合成される

このような不適切な動画が拡散されてしまうと、社会的信用が低下したり、風評被害が広がって就職や結婚に支障をきたすなどのおそれがあります。

このようなディープフェイクの被害を受けるのは、有名人だけではありません。

無名の一般の方であっても、嫌がらせ、報復、いたずらなどの目的でディープフェイクが作成されて拡散されるリスクがあるのです。
 

ディープフェイクの事例

ディープフェイクは最近の技術であるため、国内ではまだ多くの事例が報告されていません。

しかし、海外ではすでに多くの事例が発生しており、その一部を紹介します。

- 2019年9月、米国大統領選挙に出馬した民主党候補者ジョー・バイデン氏の顔を使ったディープフェイク動画がSNSで拡散されました。動画ではバイデン氏が酔っ払って支離滅裂な発言をしているように見えましたが、実際は別人物の発言を合成したものでした。 



- 2020年2月、イギリスの女王エリザベス2世の顔を使ったディープフェイク動画がテレビで放送されました。動画では女王がダンスをしたり、ドナルド・トランプ氏やボリス・ジョンソン氏をからかったりしているように見えましたが、実際はコメディ番組の企画で作成されたものでした。


- 2020年4月、ロシアの大統領ウラジーミル・プーチン氏の顔を使ったディープフェイク動画がインターネット上で公開されました。

動画ではプーチン氏が新型コロナウイルスに感染したことを告白しているように見えましたが、実際は政治的なパロディで作成されたものでした。

これらの事例からもわかるように、ディープフェイクは政治的な目的や風刺、娯楽など様々な用途で作成されています。

しかし、その中には悪意や偏見を持って作成されたものもあり、本人や関係者にとっては大きな迷惑や不利益をもたらす可能性があります。


【ディープフェイクを公開された場合の対処法】削除や訴訟などの方法

最後に、ディープフェイクを公開された場合の対処法について見ていきましょう。



ディープフェイクを公開された場合は罪に問える可能性がある


ディープフェイクを公開された場合は罪に問える可能性があります。具体的には、以下のような罪が考えられます。

- 名誉毀損罪:不実な事実を公表して他人の名誉を毀損すること。最高で3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
- 著作権侵害罪:他人の著作物を無断で使用すること。最高で10年以下の懲役または1000万円以下の罰金。
- 個人情報保護法違反:他人の個人情報を無断で利用すること。最高で6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金。

これらの罪に該当するかどうかは、具体的な事案によって異なりますが、ディープフェイクは本人や関係者の許可なく作成されることが多いため、これらの罪に抵触する可能性は高いと言えます。


動画の削除を求めることができる

ディープフェイクを公開された場合は、動画の削除を求めることができます。具体的には、以下のような方法があります。

- サイト管理者に削除依頼をする:

動画が掲載されているサイトに連絡して削除依頼をする方法です。サイト管理者が協力的であればすぐに削除してくれる可能性があります。

- サイト運営会社に削除依頼をする:

動画が掲載されているサイトの運営会社に連絡して削除依頼をする方法です。サイト運営会社は、プロバイダ責任制限法に基づいて、削除依頼に応じる義務があります。

- 裁判所に仮処分命令を申し立てる:

動画の削除を裁判所に命じてもらう方法です。仮処分命令は、訴訟を起こす前に緊急の措置として行うもので、速やかに動画の削除を実現できます。

これらの方法は、ディープフェイクの作成者や公開者が特定できない場合でも有効です。

しかし、これらの方法は法的な手続きが必要なため、専門家の助けが必要です。



ディープフェイクの作成者や公開者を特定することができる

ディープフェイクを公開された場合は、ディープフェイクの作成者や公開者を特定することができます。具体的には、以下のような方法があります。

- サイト管理者やサイト運営会社に情報開示請求をする:動画が掲載されているサイトに連絡して、動画の投稿者やアクセス者の情報を開示してもらう方法です。

サイト管理者やサイト運営会社は、プロバイダ責任制限法に基づいて、情報開示請求に応じる義務があります。


- 裁判所に情報開示命令を申し立てる:動画の投稿者やアクセス者の情報を裁判所に命じてもらう方法です。

情報開示命令は、訴訟を起こす前に行うもので、ディープフェイクの作成者や公開者を特定するために必要な情報を入手できます。

これらの方法は、ディープフェイクの作成者や公開者が匿名であっても有効です。しかし、これらの方法は法的な手続きが必要なため、専門家の助けが必要です。
 

ディープフェイクの作成者や公開者に損害賠償請求や刑事告訴をすることができる

ディープフェイクを公開された場合は、ディープフェイクの作成者や公開者に損害賠償請求や刑事告訴をすることができます。

具体的には、以下のような方法があります。

- 民事訴訟を起こす:動画の削除だけでは不十分であると判断した場合は、損害賠償請求を含む民事訴訟を起こすことができます。民事訴訟では、精神的苦痛や名誉毀損などの損害に対して金銭的な補償を求めることができます。


- 刑事告訴をする:動画の公開が犯罪行為であると判断した場合は、刑事告訴をすることができます。刑事告訴では、警察や検察に動画の公開者を捜査・起訴してもらうことができます。刑事告訴では、動画の公開者に対して懲役や罰金などの刑罰を科すことができます。

これらの方法は、ディープフェイクの作成者や公開者を特定できた場合に有効です。

しかし、これらの方法は法的な手続きが必要なため、専門家の助けが必要です。



【まとめ】ディープフェイクの怖さに気をつけよう

今回は、ディープフェイクというAI技術について、その怖さやリスク、対策についてお話ししました。

ディープフェイクは、人物の動画や音声を人工的に合成する処理技術で、本物と見分けがつかないほどに精巧なものが作成できます。

しかし、そのリアルさゆえに悪用されるケースも増えており、個人や企業にとって大きな脅威となっています。

ディープフェイクを公開された場合は、動画の削除や情報開示を求めることができます。

また、ディープフェイクの作成者や公開者を特定できた場合は、損害賠償請求や刑事告訴をすることができます。


しかし、これらの方法は法的な手続きが必要なため、専門家の助けが必要です。

ディープフェイクは最新の技術であるため、法律や規制が追いついていない部分もあります。


そのため、自分自身でディープフェイクに対する知識や警戒心を持つことが重要です。

ディープフェイクに騙されないようにしましょう。また、ディープフェイクを作成する際は、倫理的に正しい方法で行うようにしましょう。


以上が今回の記事の内容です。最後までお読みいただきありがとうございました。


この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。それではまた次回お会いしましょう。バイバイ!

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