【統制理論】社会や心理の統制力が弱まると犯罪や非行が増えるのか?

今回は、統制理論という社会学の理論について紹介したいと思います。統制理論とは、社会的または心理的な統制力が弱まることで、犯罪や非行が発生すると考える理論です。この記事では、以下の内容について解説します。

- 統制理論の歴史と代表的な学者
- 統制理論の種類と特徴
- 統制理論の現代的な意義と課題

それでは、早速見ていきましょう。


統制理論の歴史と代表的な学者


統制理論は、20世紀中頃にアメリカで発展した社会学の一派です。その起源は、19世紀末にフランスで活躍したエミール・デュルケームに遡ります。デュルケームは、社会が分化・多様化することで、人々が共通の価値観や規範を失い、社会的絆が弱まる現象をアノミー(規範喪失)と呼びました。アノミーが高まると、人々は自殺や犯罪などの逸脱行動に走りやすくなると考えました。

デュルケームの影響を受けたアメリカの社会学者たちは、アノミー理論を発展させました。代表的な学者には、ロバート・マートンやアルバート・コーエンなどがいます。

マートンは、社会が目標と手段の間に不均衡を生むことで、人々が逸脱的な適応をする可能性があると指摘しました。コーエンは、下層階級の若者が中産階級の価値観に反抗してサブカルチャーを形成し、犯罪や非行に走ることを説明しました。

しかし、これらのアノミー理論は、逸脱行動を社会構造や文化的要因に帰するものであり、個人レベルでの統制力については十分に考察していませんでした。

そこで登場したのが、統制理論です。統制理論は、逸脱行動を起こす動機ではなく、逸脱行動を抑止する要因に着目しました。

統制理論の創始者とされるトラヴィス・ハーシーは、「本来はすべての人間に犯罪や非行の動機があるにもかかわらず、社会的または心理的な統制力によって犯罪や非行が抑止されている」と考えました。


統制理論の種類と特徴


統制理論には大きく分けて二つの種類があります。一つは外部統制(フォーマル・コントロール)と呼ばれるもので、警察や裁判所などの公的権限を有する機関や、親や教師などの社会的役割を担う者による統制力を指します。

もう一つは内部統制(インフォーマル・コントロール)と呼ばれるもので、自己規制や良心などの個人的な統制力を指します。外部統制は、逸脱行動に対する罰や報酬などの外発的な動機付けによって働きます。内部統制は、逸脱行動に対する罪悪感や恥辱感などの内発的な動機付けによって働きます。

統制理論の中でも最も有名なものは、ハーシーが提唱した社会的絆(ボンド)理論です。ハーシーは、人間が社会に結びついている度合いを四つの要素に分けました。それは、他者への愛着(attachment)、目標達成のために個人が積み重ねてきた投資(commitment)、慣習的活動に巻き込まれていること(involvement)、規範や道徳への信念(belief)です。これらの要素が強いほど、人間は逸脱行動を起こすリスクを高く感じ、逆に弱いほど、逸脱行動を起こすコストを低く感じると考えました。


統制理論の現代的な意義と課題


統制理論は、社会学だけでなく、教育学や法学、心理学、社会福祉学などの隣接領域でも用いられることが多い理論です。

特に、犯罪や非行の予防や改善に関する政策やプログラムにおいては、統制理論が重要な基盤となっています。例えば、家庭や学校でのしつけや教育、地域での見守りや支援、NPOやボランティアなどの市民活動、犯罪者への更生や就労支援などは、すべて統制力を強化することを目的としています。

しかし、統制理論にも課題や批判があります。一つは、性悪説を前提としていることです。統制理論は、人間は本来犯罪や非行を起こす傾向があると考えていますが、これは性善説を前提とする学習理論と対立する見解です。

学習理論は、人間は本来犯罪や非行を起こさないと考えており、犯罪や非行は社会的・文化的に学習されたものだと考えています。このように、人間の本性に関する哲学的な問題が絡んでいます。

もう一つは、社会変化に対応できるかどうかということです。統制理論は、20世紀中頃のアメリカ社会を背景に発展した理論ですが、現代社会ではグローバル化や多様化や情報化などの変化が起こっています。

これらの変化は、人々の価値観や規範、社会的絆などに影響を与える可能性があります。例えば、インターネットやSNSなどのメディアは、人々のコミュニケーションや情報収集の方法を変えていますが、これは統制力にも影響を与えるのでしょうか?

また、多様な文化やライフスタイルが認められるようになった現代社会では、一律的な規範や道徳に基づく統制力は適切なのでしょうか?このように、統制理論は、現代社会においても有効であるということを示す必要があります。


まとめ


今回は、統制理論という社会学の理論について紹介しました。統制理論は、社会的または心理的な統制力が弱まることで、犯罪や非行が発生すると考える理論です。

統制理論には外部統制と内部統制の二つの種類があります。外部統制は、公的権限や社会的役割を担う者による統制力です。

内部統制は、自己規制や良心などの個人的な統制力です。統制理論の中でも最も有名なものは、ハーシーが提唱した社会的絆理論です。

ハーシーは、人間が社会に結びついている度合いを愛着・投資・関与・信念の四つの要素に分けました。これらの要素が強いほど、人間は逸脱行動を起こすリスクを高く感じると考えました。

統制理論は、犯罪や非行の予防や改善に関する政策やプログラムにおいて重要な基盤となっています。しかし、統制理論にも課題や批判があります。

一つは、性悪説を前提としていることです。もう一つは、社会変化に対応できるかどうかということです。これらの問題を解決するためには、統制理論をさらに発展させる必要があります。

以上が、統制理論についてのブログ記事でした。この記事が皆さんの知識や興味の向上に役立ったら嬉しいです。次回もお楽しみに!

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